まほろば【現代編】
そんなある日、早朝何かの気配で目が覚めると、枕元に紗和と紗来の姿があった。

いつもと違う、焦点の定まらない瞳に青白い光が灯っている。

それは、二人が夢見の力を発動しているときの兆候だった。

思わず体を起こした俺に向かい、二人の口から寸分違わぬタイミングで言葉が発せられる。

「「水を纏いし清き乙女。乙女が携えし眩く輝く光が己を助けん」」

二人はそれだけ言うと、急に体の力が抜けたようになりその場に倒れこんでしまった。

二人が倒れこむ前に何とか抱きかかえると、そのまま自分が今まで寝ていた布団の上に寝かせる。

妹たちの夢見はいつも気まぐれで、願ったときに得られるわけではない。

しかし、その言葉には一笑にふせない重みがある。

俺は、この託宣とも言える言葉について考えていた。
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