まほろば【現代編】
「あは、あはははは」

とりあえずその場をとりなすようにハルカは乾いた笑いを上げるが、少年のため息に撃沈する。

「あのなー、ほら見ろ。逃げられただろうが」

少年はこれ見よがしに辺りを指差す。ハルカは渋々立ち上がると、辺りの気配を探り引きつった顔を少年に向けた。

「ほら、でもね。良かったじゃない、誰も怪我しなくて」

ハルカの言葉にさらに眉根を寄せると、少年はプイッと顔を背け歩き出した。

「えっ、ちょっ、ちょっと待ってよ。ねえ、リュウったら」

慌てて追いかけようとするハルカだったが、次の瞬間まるで闇に溶けるかのように消える少年を呆然と見送るしかなかった。

「はぁー、いったいなんでこんなことになったんだっけ?」

少女は夜空を見上げ深いため息を吐く。

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