まほろば【現代編】
耳に心地良いテノールの声が、背中を後押しするように響く。

父さんの姿を見て、一瞬取り乱しそうになった俺の気を鎮めるには効果的だった。

「わかったよ、父さん。だから、父さんはゆっくり休んで、後は俺たちに任せてくれ」

「ああ、頼んだぞ」

その言葉を合図に、周りにいた四神も立ち上がる。

こうやって、四神全てが揃うのを見るのは初めてかもしれない。

今はそれぞれ人型を取って本来の力をかなり抑えているが、それでも四人が揃うとかなりの迫力がある。

ホムラが代表するように一歩前に出た。

「さあ、行こう」

いつと変わらぬにこやかな顔で、何の気負いもない。

他の面々にも顔を向けるが、三人とも同じように落ち着いた顔をしている。

ここで一人、心乱すわけにはいかない。

深く息を吸い込み、体を巡る気の流れを感じとり、気を落ち着かせる。

もうすぐ時間は、亥の刻。

準備に取り掛かるにはちょうどいい時刻だ。

「あぁ、行こう」

先頭に立ち部屋を出ると、後ろを振り返らずに鎮守の杜の修行場へと向かった。

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