まほろば【現代編】
その瞳に絡めとられないように、心を落ち着かせる。

不思議と恐怖感は全くなかった。

ツクヨミが右手を上げ、その掌の上に闇の塊を作り出す。

俺は、再び剣を正眼に構えた。

一瞬の間の後、ツクヨミが右手を振り上げ俺は、地面を蹴った。

まるでスローモーションのように景色が流れる。

ツクヨミが放った闇の塊は、俺の右耳を掠めるように飛んでいった。

しかし、その一撃で油断していた。

すぐさま、ツクヨミの左手が振り下ろされる。

目の前に黒い塊が迫っていた。

宙に身を投げた状態のため、避ける術がない。

ぶつかる!そう思った瞬間、何か暖かいものがふわりと体を包み込むのを感じた。

とても、懐かしい愛おしい感覚。

禍々しい黒い塊が俺の体を包み込んでいる水のヴェールのようなものにぶつかると、目の前ではじけるように消滅する。
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