まほろば【現代編】

iii

どこをどう移動したかなど全く覚えていない。

だけど、気づけば私は自分にあてがわれている部屋の中で蹲り堪えきれない嗚咽を漏らしていた。

まだ、網膜にはっきりと焼き付いている。

どうして……。

『無知の代償よ！』

ミツハさんの言葉だけが頭の中で、何度も何度も繰り返し響いている。

「どうした？」

ふいに背後から声がかかった。

慌てて手の甲で涙を拭おうとするが、後から後から零れてくる雫は止ってくれなくて、なかなか振り返ることが出来ない。

すると、背後からスタスタと近づいてくる足音が聞こえてさらに気だけが焦る。

こんな顔、見られるのは嫌だ。

だから、体育座りの格好になり、おでこを膝の上にくっつけて、そのまま小さく丸まった。

私の正面に回って膝を突く音が聞こえる。

ついで、頭の上にフワリと大きな掌が乗せられた。
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