まほろば【現代編】
思わず口を挟んだ俺に対して、ただでさえ悲しげなその瞳に深い後悔の色を湛えてこちらに視線を向けてきた。

「申し訳ございません。ただ、呪詛を返してしまうと彼らにそれ以上の災いが起こってしまうので……。私にはどうしてもそうすることが出来ませんでした」

ようは、ツクヨミが優しすぎるということなのだろう。

「それは、わからないでもないが、そのせいで一般の何も知らない人間たちにもっと大きな災いが起こったかもしれないんだぞ」

「ええ、わかっています。それもひとえに私の心の弱さにあります」

心が弱いというより、やはり優しすぎるのだろう。

「ただ、安心していただきたいのは飛龍様のお陰で本来の力を取り戻したので、私がここにいる限り、妖がこちらに再び来ることはありません」

「そっか。それは良かった」

「ですが……」

何故かそこで言葉を切り、少し困ったような表情を浮かべた。

「なんだ?」
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