まほろば【現代編】
「なあ、ものは相談だ。あの娘、ハルカをオレにくれないか?」

予想はついていた言葉だった。

「ハルカは物じゃない」

「まあ、それはそうなのだがな」

軽く肩を竦めながら視線をこちらに戻すと、真剣な眼差しとぶつかった。

「オレは、ハルカを愛している。おそらく、お前たちが考えよりも深く。やっと、見つけたのだ。もう、手放すには遅すぎる」

「勝手なことを言うな!ハルカが自分の意思でここに来たのならいざ知らず、勝手に連れてきておいて手放せないだと!ふざけるな!!」

思わず立ち上がった俺を、スサノオは複雑な表情を浮かべながら見上げた。

そして、ゆっくりと立ち上がる。

「まあ、そうだろうな。それに、お前も簡単に諦めるぐらいなら、ここまで迎えになど来ないだろう。だが、お前の力がオレに及ばないのならば力ずくでもハルカを奪うつもりだったんだがな。さて、そろそろ、か」

「何を……」
< 654 / 702 >

この作品をシェア

pagetop