まほろば【現代編】
夜の国
大きな月が映っている泉がある。
その中央には、見上げるほどの大樹が二本そびえ立っていた。
その片方の木の上に、長い黒髪をなびかせた青年がどこか物憂げな表情で腰かけ、ぼんやりと泉に浮かぶ月を見ていた。
そして、軽く握り締めていた掌を開く。
その掌の上には、蜘蛛に似ているがどこかチグハグな生き物がチョコンと乗っていた。
「あなたには、いつも辛い思いをさせてしまっていますね。もっと、私がしっかりしていれば……」
そう言いながら、慈しむようにその生き物の背中を指の腹で優しくなでる。
「でも、もう心配しないでください。あなたは、ここでゆっくりと自由に過ごしていいんですからね」
どこまでも優しい眼差しに、青年の掌の上の生き物もどこかしら嬉しそうな表情を浮かべた。
「それに、もうすぐここも賑やかになります。ほら、聞こえませんか?」
青年が少し耳を澄ますようにすると、どこからともなく声が響いてきた。
「ツクヨミー!」
その声と共に、四人の人物の影が差した。
大小それぞれある影の中から、一人が飛び出した。
月の光に照らされた、その少年の髪の毛が紅く煌めく。
「ツクヨミ、ただいま!」
青年は、四人の姿を認めると穏やかに微笑みこう声をかけた。
「おかえりなさい」
夜しか訪れないこの国にも、太陽のように辺りを照らすものたちが来訪した。
青年は、今度は上空に佇む月を見上げる。
キラキラと降り注ぐ月光に照らされた青年は、もう何ものも傷つけることがないよう、そう静かに願った。
その中央には、見上げるほどの大樹が二本そびえ立っていた。
その片方の木の上に、長い黒髪をなびかせた青年がどこか物憂げな表情で腰かけ、ぼんやりと泉に浮かぶ月を見ていた。
そして、軽く握り締めていた掌を開く。
その掌の上には、蜘蛛に似ているがどこかチグハグな生き物がチョコンと乗っていた。
「あなたには、いつも辛い思いをさせてしまっていますね。もっと、私がしっかりしていれば……」
そう言いながら、慈しむようにその生き物の背中を指の腹で優しくなでる。
「でも、もう心配しないでください。あなたは、ここでゆっくりと自由に過ごしていいんですからね」
どこまでも優しい眼差しに、青年の掌の上の生き物もどこかしら嬉しそうな表情を浮かべた。
「それに、もうすぐここも賑やかになります。ほら、聞こえませんか?」
青年が少し耳を澄ますようにすると、どこからともなく声が響いてきた。
「ツクヨミー!」
その声と共に、四人の人物の影が差した。
大小それぞれある影の中から、一人が飛び出した。
月の光に照らされた、その少年の髪の毛が紅く煌めく。
「ツクヨミ、ただいま!」
青年は、四人の姿を認めると穏やかに微笑みこう声をかけた。
「おかえりなさい」
夜しか訪れないこの国にも、太陽のように辺りを照らすものたちが来訪した。
青年は、今度は上空に佇む月を見上げる。
キラキラと降り注ぐ月光に照らされた青年は、もう何ものも傷つけることがないよう、そう静かに願った。