まほろば【現代編】
「今日はもう帰るぞ」

顔だけじゃなく、声からもその不機嫌さは伝わってきた。

何か怒らすようなことしたかな?

やっと私から離れたホムラは、私の手を取ると「行こう」と促した。

リュウの視線が、その手の上に注がれている。

うーん、コレってもしかして? 

思わずにやけてしまいそうになる私ってば性格悪い? 

妄想を膨らませていた私は、ホムラに引っ張られて我に返った。

気が付けばリュウの背中はだいぶ小さくなっている。

「ちょっと、待ってよー」

慌てて追いかけながらも、やっぱり頬が緩んじゃうのは仕方がないよね? 

あれ? でもそういえば、かまいたちってどうなったんだろう? 

私の疑問を投げかけても、無視してどんどん進んでいってしまうリュウ。

この夜、結局私の疑問は解決することはなかった……。
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