まほろば【現代編】
「綾姉を危険な目にあわせるわけにはいかないよ」

俺の言葉に、初めてその瞳が揺れた気がした。

「どうして? ハルカちゃんならいいのに?」

「ハルカは、俺が守るから」

「じゃあ、私のこともリュウ君が守ってよ」

「……」

いつも以上に強い光がその眼差しから発せられている。

どうやら、もう何を言ってもダメらしい。

子供の頃からとても聞き分けの良かった綾姉が、こんなわがままを言うのも初めてかもしれない。

「……わかったよ」

「ありがとう!」

綾姉は、子供みたいに俺に抱きついてきた。

綾姉の綺麗な髪の毛から香るシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。

まあ、もうすぐ夏休みだし実際の捜索はそれからだなとぼんやり考えながら手持ち無沙汰の両手をベッドについた。
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