For 10 years
そんな微妙な空気を破るように、絢華ちゃんが口を開く。



「ちょっ、優太!なんか保護者みたいじゃない?」


「だって保護者みたいなもんじゃん。いつも絢華の保護者にもなってるだろ?」



そんな二人のやりとりが、凄く幸せそうで、胸が痛い。



「で?話って?」



先に座った進藤さんが絢華ちゃんに話をふる。



「育児休暇を、あと一年半ほど延ばしてもらいたいんですけど」


「一年半?何で?」



絢華ちゃんは、視線を向けたお腹を、愛しそうに撫でながら



「二人目ができたんです」


「えっ!?」



進藤さんのその声は、俺の心の声でもあった。


絢華ちゃんは、俺が前へ進めない間も、一つ一つ幸せを重ねてるんだ。



「予定日が八月一日なんで、この子が一歳になる頃まで、育児休暇をいただきたいんです。無理ですか?」


「いや、大丈夫だよ。それより、おめでとう」


「ありがとうございます」



俺はあまりにショックで、“おめでとう”の一言さえ、言えなかった。
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