For 10 years
四十九日の法要を終えて五日後……


仕事場へ、絢華ちゃんから電話が掛かってきた。


陣痛がきたと――…


絢華ちゃんが出産、入院の間は、進藤さんと佳菜子さんと俺で、順番に蒼太くんを預かることになっていた。


だからシフトも、誰かがちゃんと保育園へ迎えに行けるようにくんであった。


今日は進藤さんの日。


正直俺が行きたかった。


でも、ホールの進藤さんと調理場の俺が交替できるわけがないんだ。


この日は、絢華ちゃんが気になって仕事にならなかった。



翌日、夕方蒼太くんを迎えに行ってから、病院へ向かった。


病室に入ると、絢華ちゃんは赤ちゃんと添い寝していた。


絢華ちゃんの頬には涙の跡があった。


きっと赤ちゃんをみながら、優太くんのことを思い出していたんだろう。


ベッドの横にある椅子に座り、蒼太くんと童謡を歌ったり、手遊びをしたりした。
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