For 10 years
「絢華ちゃん、大丈夫?」


「……ごめんなさい」


「何で謝るの?」


「……今はまだ、……あーいう幸せな家族を見るのは……凄く、……辛いっ」


「……そっか」



やっぱりそうだったんだ。


絢華ちゃんはどこか遠い目をしていたから、そうじゃねぇかと思ってた。



「……ごめんなさい……こんなこと、言って」


「いや、……実際そうだと思うよ。……俺には、絢華ちゃんの気持ちを、すべてわかってやれるわけじゃねぇけど、……絢華ちゃんがどんだけ家族というものを大切にしてきたか、どんだけ優太くんのことを愛してたか、俺知ってるから。……やっぱり辛いと思う」


「うん……うぅ…くっ…」



そのあとも涙を流し続ける絢華ちゃんに……


それ以上は声をかけられなかった。



アパートに着いた時、蒼太も優華も寝てて……


優華を抱いている絢華ちゃんのあとを、蒼太を抱きながらついていった。


アパートに入って布団に寝かせたあと、ほんとはもっと傍にいてやりたい……いや、俺が傍にいたいって、そう思った。


でも……


その言葉は、口には出せなかった。
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