For 10 years
.


どれだけ経ったのか。



「隼人さん、ごめんね」



絢華ちゃんはそう言って、俺から離れた。



「絢華ちゃんはさ、一人で頑張りすぎだよ。たまにはこうやって甘えていいんだよ?」



もっともっと俺に甘えてほしい。


もっともっと俺を頼ってほしい。



「……」



でも、絢華ちゃんは何も言わずに、抱き締めていた写真を胸から離し、じっとそれを見つめる。


そしてその目からは、また涙が溢れてきた。



「絢華ちゃん?」


「隼人さん、ごめんね。優太はもういないけど、……でもあたしやっぱり、……優太にしか甘えられないっ」


「……そうだよな。余計なこと言ってごめんな」



絢華ちゃんには、優太くんしか見えていない。


それをわかっていて想いを告げたんだ。


正直、こんなふうに言われて凄くショックだった。


でも……


何ヵ月かかってもいい……


何年かかってもいい……


俺のことを見てくれるようになってほしい……


そう強く思ったんだ――…
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