音と夢の羽
幼いころの時まで話はさかのぼる。

わたしは、とても人見知りだった。

幼稚園のころは、全く他人と会話をしなかったんだ。

「音羽ちゃんの声聞いたことない。」

それは、子供と親の間で聞き飽きたセリフだった。

何を喋ったらいいのかわからなかった。

どうすれば、仲良くなれるのか?

何を話したら、友達になれるのか?

嫌われたらどうしよう。

わたしは幼いながら、考えすぎていた。

当然、話さなければ、友達にはなれない。

私には、友達どころか会話する相手も居なかった。

他の園児は、気味悪がってわたしに近づかなかった。

しかし、中には、絵本を隠したり、パシリをさせたり、

階段から突き落とそうとしたり、いじめてくる園児もいた。

わたしには何故か人形のように感情がなく、ひとりぼっちになってもさみしくなかった。

いじめられてもあまり悲しくなかった。

幼稚園児なのに、はしゃぐということがなく、暴れ回ることもなかった。

かなり無気力だったなぁ、と思う。

そんなわたしに、母がピアノ教室に通わせてくれた 。

と言っても、幼稚園のなかで募集していた、
幼稚園のホール内に園児があつまり、歌やピアノを習うといったものだった。

当然、同じ組の園児たちと一緒に習うことになる。

ずらっと並んだ白と黒の鍵盤。

音符の読み方、ト音記号…へ音記号…
なにもかもが新鮮だった。

最初は訳がわからなった。

教室に毎回通うと、シールがもらえるのだが、わたしはそれが初めは目当てだった。
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