鬱(うつ)病という名の長きトンネル
序章
2008年2月

日曜日の昼下がり。

カウンターキッチンに立って、なにやら談笑している妻と娘を、テーブルに座りながらぼんやり眺めている。

もうすぐ訪れるバレンタインデーに備え、娘は妻から手作りチョコのレクチャーを受けているようだった。

「そうそう、チョコが溶けたら、この容器に流し込んで」

「わっ、溢れちゃった」

「やだぁ、もったいないな」

けらけらと笑う2人の声が聞こえる。

どうやら銀色のアルミ箔の型から、チョコが溢れてしまったようだ。
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