東京
八。

多摩川につくと
空は暗くなり


まだ暑いくらいの気温に
涼しい風が心地い。

二人で、1番綺麗なところを探した。
ばっちが足を突っ込み
いつもはしゃいでいたところ。

そして川の方を向き
並んで立った。

「あゆみ。何か言いたいことあったら言っとけよ。
本当に最後だから。
このお別れが最後だから。」


鞄の中から
ばっちの入った小瓶を取り出してあゆみに差し出す。
『…。』

あゆみの手に力が入る。
『まだわからないんだよね。ばっちのいない生活って。』

「うん。」

『これでやっと。向き合わなきゃいけないんだね。』
「…うん。」

あゆみは小瓶を受け取り
空に掲げた。

『一緒に自転車でね、学校から高円寺まで行ったんだ。すごく遠くてびっくりしたけど。
ばっちとだったらあっという間だった。』

「そっか。」

『ばっちが私の両想い切符なくしてケンカになったの。でも次の日ね、手作りの両想い切符持ってきたの。』

「バカだなばっちは。」

『バカすぎ。』

「ここに巻こう。
東京にもばっちがいた証だから。」


ゆっくりと
小瓶のコルクをぬく。
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