たっぷりのカフェラテをあなたと
 数日後。
 浩介からは連絡が来ないどころか、しびれを切らして私から電話をしても完全無視を決め込んでいるようだった。もちろんメールへの返信もない。

「これは……別れようって事?」

 どこか期待していた。
 浩介に対してこれだけ怒った自分を見せたのは初めてだった。だから少しは手放すのが惜しくなってすがってくるんじゃないか……って。
 でも結果は違った。浩介は私を捨てる事を選んだ。

「……最低」

 つながらない浩介の携帯番号をその場で消し、メモリされていたメールも全て削除した。
 彼からアクセスがあっても、もう二度と応答しないつもりだ。

(まぁ、この雰囲気からすると二度とアクセスもしてきそうにないけど)

 心の中でそうつぶやき、自分の中で何かが“終わった”感じがした。
こうまでなっても、浩介を嫌いかと言われれば、嫌いとは言い切れない。
 今だって彼の優しい声やしなやかな肌の感触を残酷なぐらいリアルに思い出せる。
 
 でも……『終わり』なのだ。

 心の中の悪魔は追い出しきれなくても、現実世界でのつらい交際には限界が来ていた。
 だから……これで、いいのだ。

 都合のいい女……卒業。
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