愛罪



 午後2時にも関わらず、不機嫌な空のせいで周囲はグレイのフィルターを被せたかのように薄暗い。

 いかにもいい奴ぶった日光が嫌いな僕には、心地いい天気ではあるけれど。

 わけもなくつまらない今は、分身くらい笑っててよと思う。

 矛盾もいいところ。



 やや早く流れる雲を追いながらコンビニの前にある横断歩道を渡り、芝生の公園の中に伸びる遊歩道へ入った。

 この場所を抜けた先に自宅がある。



 芝生の敷きつめられた長閑な公園はこの時間、ジョギングする中年男性や、愛犬の散歩に付きあう老人が優雅な時を過ごしている。

 よく目立つベージュの髪に、グレイのセットアップ姿でコンビニ弁当を持った若者なんて僕以外見当たらない。

 すれ違いざま、誰もそんなこと口には出さないけれど、“無職で昼間からふらふらしている若者”とでも言いたげなのは、ちらりと向けられる横目の視線が物語っていた。



「だからっ!あたしは知らないって言ってるの!しつこいわね!」



 ジョギングする男性が背後へ走り去る足音に混じり、女性の怒声が耳へ滑りこむ。

 なんとなく外していた視線を正面へ戻してみると、クリーム色のワンピースを着た女性が携帯片手に怒りを顕わにしていた。



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