はなおの縁ー双葉編ー
あたしたちは座敷に座り、あたしは、改めてあの日の礼を言った。

「たいしたことじゃないよ。礼をいうのはむしろこっちのほうかもしれない。」

いまいち、話が読めなくて

「どういうことですか?」

と問いかけた。

彼は頬杖をつきながら言う。

「、、、、正直に言えばどんな人なのかとずっと興味があった。でも、町で君を見かけても、知り合うきっかけもなくて、俺とは縁のない人なんだろうなと思っていた。」

そう言って、彼はちらりと外の景色を見やり、次いで、

「そうしたら、あの日、君が目の前でずぶ濡れになってただろ?あ、これだ!と思って、誰よりも先に声を掛けたんだ。、、、、、他の奴に獲られたくなくて。」

ちょっとはにかんだような笑顔だったが、目は真剣だった。

「、、、、。ほんとに、あの日のことは一生忘れられないかも。だって、鼻緒が二つとも切れちゃうんですよ?」

ほんとうにありえない話で、今でも人に話せば大笑いされる。

「はは、そうだよな。」
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