【短】となり


しばらくの沈黙。


何かを言いたげなような、無言を保とうとしているのか、そんな感じが続く。


まあ、いいか。

そんなこと、気にしなくても。


俺はもう一度、外へ出ようと扉を開いた。








「ありがとう…」





今度はハッキリと聞こえた。


俺の背からハッキリと。


それはまぎれもなく、有沢 ほのかの声。


か細くて高い女の子の声。


それだけで俺は飛び跳ねるくらい心臓がバクバクとしている。


「井上くん??」



突然振り返った俺に驚いている有沢と目が合った。


いつも隠されている前髪は扉を開いたことで入ってきた風でなびいている。


初めてちゃんと見る君の顔。


俺と目が合ったことで、目を見開いて頬を赤く染めている顔。


俺はなんとも言えないこの感情だ。



ただ嬉しくて、笑みを浮かべた。






「急いで閉めてくる待ってて!」



それだけ伝えて急いで図書室へと向かう。





もっと君のことが知りたくて。


もっと君の声が聞きたくて。



もっと顔を見して欲しい。



教室の隣の席の距離はあまりにも遠いから。


ゆっくりと二人、となりに並んで帰ろう…










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