17-甘い君たち-
Prologue.
「______南緒」
彼の声と共に、苦いホットコーヒーの匂いが漂ってきた。甘いほうが好きだっていつも言っているのに、彼がいれるコーヒーはいつもブラックだ。
白を基調としたリビングは、大きな窓があるのがお気に入りで。そこから太陽の光が降り注いでいて部屋はとてもあたたかい。
2人で選んだ大きなソファに座りながら振り向くと、きみが愛おしそうにわたしを見つめている。
_______あの頃と同じように。
「なんだか、昔を思い出しちゃってね」
ソファの目の前に置かれた長方形の白いテーブルに、ふたつのコーヒーカップを置いた彼は私の横へと腰を下ろす。
沈んだとなり側。
私は手にしていたあの頃のアルバムを優しく撫でる。今朝唐突に見たくなったのだ。あの、青春を駆け抜けた頃のことを。
あの時は真っ青だったけど、今は色あせてしまって水色になった表紙をそっと開く。となりの彼もそれを見て、懐かしい、と笑った。
______17歳のあの頃。
きみと私が恋に落ちた、いや、きっとそれよりもっと、ずっと前からしていた恋をカタチにした、17歳。
私達の青春すべて。
そっと、私はページをめくった。
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