【短編】ショートメッセージ
その時、何か言葉を紡ごうと微かに口が動いていたが、それは音にすらならず、もどかしかった。

「ごめん… もっと早く来れば、ちゃんと聞いてあげられたかもしれないのに…」

私が彼にそう語りかけると、彼の目尻から一筋の涙が流れているのに気が付いた。

(バカ…)

私は強く強く彼の手を握った。

戻ってきて…

お願いだから…!!

…しかし、私の願いは届くことなく、最期を知らせる合図が無情にも鳴り響く。

それは、慌ただしかったこの部屋の空気を一瞬で無にしてしまうような、いかにも機械的な高音だった。


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