共犯
「……殺すの?」
「別れ話したら睡眠薬大量に飲んで死んでやるってさ」
私は震えた。
「だったらそれもいいかと思って」
「死ぬって……殺すって」
円満に見えた彼らにそんな綻びがあったなんて。
震えて硬直しているうちに、那奈がバスタオルを巻いて戻る。
私達の間に座り、あろうことか薬入りの缶ビールを煽った。
「な、那奈!」
顔を酔いに赤らめて、那奈はテーブルに突っ伏した。
今だ震えている私に、彼が笑う。
「共犯」
私は動けなかった。

那奈は結局救急車で運ばれて一命を取り止めた。最近の睡眠薬は大量に飲んでも死ぬことはないらしい。
残念そうに項垂れる彼氏がひとり、警察に連れていかれた。
でも――。もし、これが完全犯罪になっていたら。
私は、彼と付き合っていたかもしれない。
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