河の流れは絶えず~和泉編~
「お嬢さん、こちらの佐脇さんて方はねえ、巷じゃあ、ほんとにいい男で通っているのさ。うちの子も、浩さんにはすっかり懐いちまってねえ。こちらは在所から出て、一人東京へ来て、勉強なすってる方でねえ」

またいつものおしゃべりが始まりそうなようすだったので、

「おばさん、誰か呼びに来てるんじゃないのかい?」

と言いながら、手で追い払った。

「まあ、なんだねえ、この子ときたら。はいはい、邪魔者は退散するでござんすよ。では、お嬢さん、どうぞごゆっくり。」

何だか含みのある笑顔で出て行った。

「しかしまあ、ずいぶんとたくさん持ってきてくれたなあ。」

ため息ともつかず、おもわずもれた。
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