ギャップしおりん
Gap01

第1話




「岡崎、ちょっと付き合ってくんない?」


水谷 栞里、16歳。

万人受けする容姿。
男兄弟に囲まれて育って来た私は、その影響を受けて自然と男勝りな性格になっていた。


昨日で夏休みも終わり、今日から2学期が始まった。
放課後、クラスメイトの大半は部活に行ってしまって静まり返った教室。

私は仕方なく先生から引き受けた仕事をひとりでやるはめになっていた。
そんな時に、教室に入って来た男がひとり。


女子の間で割りと、いや結構なモテっぷりを見せている、所謂、可愛い系男子の岡崎 敦也だった。
…私は全然興味ないけど。



「良いけど、何すればいいの?」

9月の生暖かい風が彼の柔らかい髪を揺らした。
ゆっくりと、近付いてくる彼。



「夏休みの課題、職員室まで運ぶから半分持ってくれる?」


「良いよ、てか俺持つよ」


私の両手にふさがっている課題を軽々と取った。
なんだこいつ、天然紳士かっての。



「…ありがと」


「いいえ」


なんか、不思議。
岡崎と肩を並べて歩いてるなんて。

って、言っても手伝って貰ってるだけだけど。





「失礼しまーす」


職員室に入ると、鳥肌がたつほど冷房がきいていた。
コーヒーとタバコが混じった異様な匂いが漂っていた。



「川嶋~、持って来た」


私たちは、担任の机に課題を置く。

相変わらず、川嶋の机汚いし、プリントが散乱してる。



「おぉ、来たか。岡崎も一緒か、お前岡崎の事一緒に課題運ぶように脅しただろ」


「はぁ!?そんな事してないし。ちょっと黙ろうか、ハゲちゃびん」


私がそう言うと、岡崎は担任にバレないように笑った。
実際若いからハゲてないけど、私からの未来予知。

川嶋は20代後半のくせに、教師ぶってるけど全然教師に見えない。



「水谷、お前の教卓前にすんぞ。
それと、2学期はちゃんと学校来いよ」


「無理、私バイトあるから帰る」

川嶋が呼び止めるのを無視し、私は職員室から出る。
それに続いて、岡崎も出て来た。



「水谷ってバイトしてるの?」


「うん」


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