蕾~桜の木の下で~
...あぁもう、なんで掴めないんだよ!

手のひらが、指先が何回も空を切る。

今日で卒業式だってのに...告えなくて何年経ってると思ってんだよ!!
周りだってみんな、何らかのかたちで想いを伝えてるのに...。

本当は、わかってるんだ。
俺がしてるのはただの願掛けだってこと。
肝心なのは、相手を想う気持ちだってこと。


俺(三倉 彼方)は、ずっと好きだった同級生がいるー。

その子の名前は榊 唯(さかき ゆい)

中学一年の頃から、ずっと同じクラスで俺と美化委員をやっていた。
薄茶色でセミロングの髪、目鼻立ちのくっきりとした顔、背は高く、脚の長い彼女。

クラスの男子からも騒がれていて、一際目立っている生徒だった。

そして外見とは裏腹に控えめな性格はより一層彼女を人気者にした。


...すげぇなぁ。


まさに“雲の上のような存在”だった。
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