囚われの歌姫
「そろそろかな。……梨亜ちゃん、一緒に行かない?」
「あ、えと……」
颯人が、と言いかけてハッとなって口を閉じた。
……颯人は別にいいか。
寧ろ来るな。
「……行くっ……」
勢いよく立ち上がる、と。
――ドンッ
何かにぶつかった。
「……ご、ごめんなっ――」
ぶつかったほうを見やると、
「…………」
無言で睨まれた。
私が小さ――いや、このぶつかった人が大きいんだと思う。
かなり迫力がある。
それだけじゃなくて、ほんとに怒ってる気がして恐い。
「透じゃん、やほ。相変わらずの無愛想ね」
「…………」
「……何か言ったらどうなのよ」
「……このちっさいのお前の連れ?」
……ちっさくないっ!
「ちゃんと上見て歩けって、言っとけ……」
それだけ言うと、去って行った。