最後にあなたと乾杯を
「タケちゃん。ごめん」
妻の大好きなラベンダーの香り。
彼女は僕をぎゅっと優しく抱きしめた。
「ぜーんぶ、嘘」
えっと思わず妻を見上げる。
「でも好きな人ができたのはほんと」
僕は眉をしかめる。
ますます妻がわからない。
「もうタケちゃん鈍いなあ」
ふふっと笑いながら妻は僕の手をとった。
「こーこ」
「…」
「あたしの好きな人はここにいるの」
まさか。
お腹に手を当てられた僕はやっと状況を把握した。
「妊娠三ヶ月だって」