ひな*恋
「では、本当に気を付けて下さいね。
それじゃあ……」



「あ、はい。
ありがとうございます」



ペコリ そのお客さんに頭を下げると、私はいつもの営業スマイルで見送ろうとした。



「………………っ」



「………………?」




…のだけど。


いつまでも帰ろうとせずジッと私の顔を不安げに見ているので、私もどう反応していいかわからず営業スマイルのまま見返した。



「え…っと…?」



そうしているうちに夜も9時になったようで、やがてデパート自体が閉館となり、閉店案内のアナウンスと共に照明が1つ小さくなった。


デパートが閉館になれば、当然中の“デリカ popo”も同時に閉店となる。


つまり、今のでうちの店の営業は終わった事になったのだ。



「…すみません、閉店になっちゃいました。
早く出ないと、ドア閉まっちゃいますよ」



「あ…そうですね。
それじゃあ、妹尾さん」



「…えっ!
どうして私の名前を…」



と言って、胸元のネームプレートを見て納得した。


そっか。
従業員はみんな名前を掲げて仕事してるもんね。




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