ひな*恋
「と とにかく、返したいんです!
家がわかってれば持って行くんですけど…っ」



「何もそこまで」



さっきからそんな風に言われると、本当に何もそこまでしなくてもいいんじゃないかとさえ思ってくる。


ダメよ、ダメ。

借りたものは、ちゃんとお礼を言って返すのがマナーなんだから。




「わかったよ。
じゃあ、明日また俺がここまで取りに来るから」



「えっ
それはかえって申し訳ない…」



「しばらく俺、ここで晩飯の世話になるから毎日通う用事があるんだよ。
だからその時に」



「…それなら…」



毎日晩ご飯の世話?

なぁにコイツ、母親がいないの?

まさか急に、亡くなったとか…



「じゃ、また明日」



そう言って彼は、買った惣菜の入ったレジ袋を持って帰って行った。




「……………………」




毎日デパ地下の惣菜が晩ご飯だなんて…。

晩ご飯、作ってくれる人がいないのかなぁ。


まだ高校生なのに、何だか彼がかわいそうな気もしてきた。












しかし、実は明日の私の仕事が休みだったという事に気付いたのは、この15分後だったという…。












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