ひな*恋
「あのっ、サラダにリンゴとか入ってて大丈夫ですか?
やっぱりリンゴはリンゴだけで食べたいとか…」



「いや?
美味そうじゃん、リンゴサラダなんて」



「う 美味いですとも!
ええ、美味しいですよ!
何たって、この私のお墨付きですからねっ
…なんて…」



つい嬉しくて、早口でまくし立ててしまった。

子どもか!私はぁ!



や、でもだって!久保店長に却下を食らったリンゴサラダが、美味そうって言ってもらえたんだもん!!

ヤッタ!って気分になるよねっ



「ははっ
お前、ちょー面白れぇ」



「は…」



ケラケラ笑い出した彼に、今更だが何だかちょっぴり恥ずかしくなった。


まさか面白いなんて言われるとは思わなかったからなぁ…。




「ね、名前何てーの?
教えてよ」



「え?
妹尾…ですけど」



一応スタッフは皆、防水エプロンの上方にネームプレートを付けている。

だからわざわざ訊かなくてもわかるだろうにと思ったんだけど…



「そうじゃなくて、下の名前。
せのお、何てーの?」



「雛子…です」



促されるまま、私は正直に答えた。



そう、私はいつまでもオトナになりきれない雛っ子ですよ。

なんてひがみも込めてさ。




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