kiss xxx【TABOO】
kiss xxx
「聞いたよ、結婚するんだって?」

 アルバイト先のカフェテラス。突然カウンター席に懐かしい彼が座り、口を開いた。

 驚きと戸惑いでうろたえる私を眺め、彼は動じる様子もなくコーヒーを注文する。

 彼の前にコーヒーを差し出しながら、私は小さく頷いた。
「そうよ。結婚するの」

「どんな奴? そいつ」
 真剣な顔で問いかけてきた。

「どんなって……いい人よ。誰かさんと違ってね」

「ふうん」
 彼はコーヒーカップを手に持つと、表情を変えることなく一口飲んだ。
「うまい」

「飲んだら、すぐに帰って」
「なんで。俺は客だよ」
「本当は私語禁止なの。怒られるのは私なんだから」

「……わかったよ」
 料金を支払い、おとなしく帰る彼。

 立ち去る背中を眺めながら、深く息をついた。

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