あの頃のように
もしかすると付けまつ毛でもつけていたのかもしれない。

服装もいつもカラフルでポップだった。


——あれも、彼女なりの一種の変装だったんだろうか。


だとしたら見事に成功だ。

この2年間、無意識に彼女の姿を探すとき、長髪の派手な服装の子の姿ばかりを目で追っていたんだから。


今はオフィスガールらしい色味を抑えたメイクやモノトーンの服装が、逆にぐっと大人っぽく見える。

マルチストライプのマフラーだけが、当時の名残を残していた。


(きれいになったな)


心のどこかで響いた声を、急いで払いのける。



声を掛けたものの、何を話すかなんて決めていたわけじゃない。

言いたいことは山ほどあったはずなのに、いざ彼女を目の前にすると頭が真っ白になって、何も出てこなかった。

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