あの頃のように
固まって言葉も出ないあたしに。

潤也さんはすっと立ち上がって資料を揃えながら、言った。


「今日は28日だね。

30日いっぱいで引き継ぎをして、来月1日からうちの会社に来ること。

いいね?」

「……」


(潤也さん……)


あたしの返事を待たずにさっと部屋を横切ると。

ミーティングルームのドアに手を掛けて。

半分だけ振り返った。


「30日の退社時間に、ここに迎えに来るから。

用意しておけよ」

「……あの」

「うちの会社はカジュアルOKだから」


言葉もなく立ち尽くすあたしの目の前で。

潤也さんの言葉にかぶせるようにドアが音を立てて閉まった。

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