あの頃のように
“そのため”に近づいた。

それだけなんだから。


「まさか名前まで偽名だったとはね。

どうりでいくら探しても見つからないはずだ」

「……」

「2年前、君はうまくやったよね。

簡単に手の内にハマる男を見るのは面白かった?」


こんなことを言うつもりなどなかったのに。

彼女の顔を見ると、くどくどと恨み言が口から勝手に漏れでた。


(今さらこんなことを言って、何になる?)


よせばいいのに、心の準備なしにわざわざ声を掛けてしまった自分を悔やむ。

責め立てたところで、彼女が自分のもとに帰ってくるわけでもないのに。


そもそも、俺の近くに“いた”ことすら、幻だったんだから。

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