Hurly-Burly 5 【完】
protect
「間に合ったってどういうこと?」
机が微かに視界の端に写る。
「・・・ねぇ、ちぃ君今の何だったんだ?
どうして、机落ちてきて人の手が・・・」
地面に転がった時の衝撃で背中がジワジワ痛い。
「・・・・ちぃ君?」
ほのかに香る柑橘系の匂いが鼻をかすめる。
「・・・・どうして、急いでたの?」
オレンジ色の髪がふわふわと気持ちよさそうに揺れる。
「・・・・いつ・・までそうしてる・・の?」
涙で視界がぼやけて青い空が歪んで見える。
それは、どこか狂気じみてた。
世界の終わりが来るならこんなふうに歪んで、
いびつな形に変化を遂げるのかもしれないと。
「・・・・ちぃ君、聞こえ・・てる?」
そっと顔を動かすと目をつぶったちぃ君が
視界いっぱいに居て何寝てるのよって言おうと思った。
こんなところで寝て冗談通じないなって言ってやる気で、
「・・・・・血が」
流れる血液を見てフラッシュバックした。
言葉にならない恐怖で震え上がる。
「・・・・・ちぃ君、お願いだから・・・・」
こんなことってないよ。
ポツリと地面に涙が伝ってシミを作った。
雨なんて降ってないのに可笑しいな。
「・・・・・ちぃ君」
頭から流れる血液にそっと触れようとして止めた。
これは夢なんかじゃない。
妄想なんかでもなくて覆いかぶさるちぃ君の手が
少しずつ緩んでいくことが現実で。
今になって思い知ることがあった。
よくよく考えてみれば、いつも確かにあたしは守って
もらっていたんだと思う。
最初は、尻餅つきそうになった時に座布団代わりに
なって手を怪我してあたしを守ってくれた。
次は、桑田さんの事件で危ない目にあった時、
最後にあたしを見つけ出してもう大丈夫だって言ってくれた。
それから、まだたくさんある。
雷からもあたしが怖いって言って傍に居てくれた。