キモチの欠片

「どうして……」

まさか葵がいるなんて思わなかった。
ゆっくりと足を踏み出しあたしたちの方に向かってくる。


「あの、これ」

朔ちゃんに持っていた紙袋を差し出すと、それを受け取る。

「あぁ、ありがとう。拾ってくれたんだね。ところで君の名前は?」

中身を確認しながら葵の名前を聞いた。


「羽山、葵です」

一瞬、戸惑った表情を見せながらもボソッと名乗った。

朔ちゃんはあたしの顔を見てニヤニヤする。
なに、その顔は。


「なるほど、君が噂の葵くん、ね。他のみんなは帰ったのかな?」

「噂って……?」

「あぁ、いやこっちの話」

「そうですか。ここにみんな残るのも悪いからカラオケに行ってもらいました。俺はその紙袋があったから」

「ご丁寧に待っててくれたんだね。それで柚音のことも心配だったと」

朔ちゃんがポンとあたしの頭に手をのせた。
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