あの夏よりも、遠いところへ

ていうか。


「遠藤て北野のこと好きなん……」


うなだれた俺に、遠藤は豪快に笑った。


「ぜーんぜん。オレ、そういうの嫌やもん」

「そういうの?」

「友達と女取り合うの」


別に好きじゃねえって言ってんじゃん。

でも、嫌だな。遠藤だけじゃない。誰だって嫌だ。北野に触ろうとか考えてるやつがもしいたら、俺たぶん、ぶん殴る。


「清見てオモロイなあ」

「はあ?」

「ええやん。青春してるやんけ」


そう言う遠藤こそ、右を見ても左を見ても青春って感じだ。たしかにこいつは男前だけど、それだけじゃねえんだよな。

オモロイし、空気が読める。ナルシストだけど、本当は物凄く、仲間想いの熱いやつ。

遠藤の周りに人が集まるのは、必然なんじゃねえかなって。


「なんかあったら、また言うてや」

「……おう」


なんか。……なんか、あるんだろうか?

サヤへの気持ちとは全然違う。もっとややこしいけど、それでいてシンプルな気持ち。言葉にするの、難しいな。

触りたいとか、そういうのじゃなくてさ。もっと、こう、透明な感じ。

知りたい。北野のこと、もっと知れたらいいと思う。これからいろんなことを聞いて、俺も彼女に、いろんなことを話して。

こういうの、なんて言うんだっけ?
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