春雪
「……あのね、24日、お弁当作って夜に会社に持って行っていいかな?」

 どこかで電話の女性の言葉を信じている部分が少しだけあるのかもしれない。
 でも少しの時間でも彼に会いたいという気持ちが強かった。
 だからかとっさにそんな言葉が出てしまた。

『今日の先輩って……大学の時の先輩?』
「え?」

 返事をもらえるとばかり思っていたので、突然先輩について質問されて驚いてしまう。
 彼は私に関することにはあまり興味ないようだったのに、なぜ先輩だけ気になるのだろうか?

「ううん、中学……」
『そんなに前から!?』

 私の言葉によほど驚いたのか、話してる途中で遮られた。
 今まで私は雅輝くん以外の男性と仲良くすることはなかった。
 人見知りが激しく女子高育ちのせいか、男性と話すのに躊躇してしまう方だからだ。
 そのことは彼も知っている。
 だからこそ私に仲のいい人がいると知って驚いたのかもしれない。

「う、うん。家が近いから……。あ、でも、先輩には彼女さんがいるよ?」

 やましいことなどないという意味も込めて彼女がいることを言ってみる。
 しかしそれがよくなかったようで、雅輝くんの声がさらに低くなった。

『彼女のいる男に会いにいったのか?』
「え、あ……と、友達だし……」

 幼馴染だと言うことは禁止されている。
 どう説明すればいいのかと言葉を詰まらせてしまう。
 友達としか言うことが出来ない私に雅輝くんは納得出来なかったらしい。

『最低だな……』

 冷たい言葉が胸に突き刺さった。
 今まで聞いたこともないような低い声。
 頭が真っ白になる。

「さい……てい?」
『……普通、彼女の気持ち考えたらそんなこと出来ないだろう?』
「……恋人がいたら友達と会っちゃいけないの?」
『勝手にすればいい。七海がそういう考え方なら俺はついていけない……』
「!」
『じゃあ』

 あっさりと電話が切れた。
 最後の『勝手にしろ』と『ついていけない』という言葉だけが心に残る。
 それはどう考えても別れの言葉だった。

「え? あ……」

 あっさりと告げられた別れ。
 ツーツーという電子音が携帯から聞こえる。
 私は携帯を両手に握って画面を見れば画面は通常画面に戻っていた。

「う……ああっー!」

 突然の別れに、ただ泣き崩れるしかなかった。
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