椿ノ華



「…お前は、覚えていないのか」


するりと、椿の頬を撫でる葵。

その瞳にさっきまでの冷酷さは無くて。


「俺は覚えている。全て、鮮明に」


愛しくて、切なくて、もどかしくて。


「…なのに、どうして」


ぎり、と奥歯を噛み締め。


「…どうせ俺のものにならないなら、

無理矢理にでも手に入れてやる…!」


色々な感情に揺れていた瞳に狂気が宿り。



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