鈍感ガールと偽王子


「…なに言ってんの。この前オムライス作れって言ってたから、あたし材料買って来たよ?」



そう言って、来る前に寄ったスーパーの袋を見せる。



椎葉くんの家の冷蔵庫にほとんど何も常備されていないのはチェック済みだ。



せめて卵くらいは買っとこうよと言いたい。



椎葉くん曰く、居酒屋のバイトで包丁握らされてるから、家でまで作りたくないらしい。


それにしたってさ、この飲み物しか入ってない冷蔵庫は、もう、なんていうか光熱費の無駄なのでは?



「マジ!?俺そんなこと言ったっけ。ラッキ!」


「いや、ていうかそのカッコ、もう外出る気ゼロだったでしょ?」


「ばれたか!テキトーにピザでも頼もうかと思ってた」


「宅配のピザなんて高いもん、10年早い!」


「俺、ピザ頼める日、めっちゃ遠くね?」



せめて20代のうちに頼ませてくれよー、と笑っている椎葉くん。



あたしもつられて笑いながら、キッチンに入った。


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