鈍感ガールと偽王子
でも、ま、どうせだから直接お礼と報告だけしていこうかな。
まだケータイをチェックしていないのか、さっきのメールの返事も来てない。
直接、「よかったな」って、言ってほしい。
あの、少し低くて優しい声で。
長い睫毛に縁取られたキレイな目を細めて、笑ってほしい。
………会いたい。
あたしは、ふと椎葉くんの部屋のある2階を見上げた。
「……?」
だ、れ…?
椎葉くんの部屋のドアの前に、人影が見える。
暗くてよく見えないけど、ふわふわな長い髪が、背中に流れていて…。
華奢な、背中。
顔までは見えないけど…。