鈍感ガールと偽王子



「……っ!?」




ちゃんと見えたわけじゃない。



暗いし、そんな近くでもないし、あたしの場所からじゃ『顔が重なった』って見えただけ。





……でも。



顔をくっつけるなんて、それ以外あり得ないよね?



あたし、間違ってないよね?






……胸が痛い。




鼻の奥が痛い。




喉が、痛い。




……だめだ、泣く。





「……ッ」




あたしはもう見ていられなくなって、ギュッと唇を噛んで。




じんわりと血の味がしたけど、不思議と痛みはなくて。





きっとそれは、そんな傷よりずっと、痛い場所があるからで。




< 95 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop