もう一度、恋をしよう
親同士は懇意のままだから、知りたくなくとも新一郎のことは耳に入ってくる。新しい彼女、難関突破の大学受験、一流商社への就職――……

同じように、新一郎にも私の事が伝わっているはず。

今日は、結納の日。27にもなった娘が云々と父親が持ってきた縁談。今回だけと挑んだ相手は思いのほか当たりで。見合いだからか、手すら繋がず初心な関係のまま、私を余所にとんとん拍子に話が進んでいった。

それで良かったのかもしれないと思う。

本気の恋心は、もうずっと封印していたから。きっと、自分から誰かを好きになったら、私は私でいられなくなる。

今でも、そんな恐怖を胸に秘めているのは、幼かった恋のトラウマ。
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