もう一度、恋をしよう
「分からないか? 見合いはとっくに破談になってる。今日のことは親父さん達も了解済みだ」

新一郎は、捕まえた私の腕を顔の横に押さえ付けると、唇を寄せてくる。彼の黒髪が、額の上でさらりと揺れた。

「今ならおまえを、穏やかに愛してやれる。おまえの本気も受け止めてやれる。だから、もう一度俺を好きになれよ。結婚するぞ」

嫌味なほど男の顔をして、まるで私が頷くものだと信じて疑わない新一郎。
言ってやりたいことは山ほどあったのに、そっと触れた彼の唇が微かに震えていたから、気付けば彼の背中に腕を回していた。
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