恋するキミの、愛しい秘めごと
目を通す企画書の内容は、斬新だし、読んでいるだけでワクワクしてくるような内容で、気づけばそれを読むのに夢中になっていた。
そんな私の横で、かんちゃんは眠そうにベッドに突っ伏してあくびを嚙み殺す。
「……もしかして、この為にこんな時間まで起きてたの?」
驚いてそう訊ねると、チラッと私を見て「まぁねー」とまたあくびをした。
「でも明日も早いんでしょ?」
カンちゃんは、明日は朝から会議が入っていたはず。
こんな時間からこんな事を始めたら、寝る時間がほとんどなくなってしまうんじゃ……。
「もっと早く言ってくれたらよかったのに」
心配になってその顔を覗き込むと、カンちゃんは意地悪な笑みを浮かべ、何故かいじけたように呟いた。
「だってヒヨ、“向井君”に夢中だったから」
確かに向井君には夢中だったし、心のオアシスなわけだから大事だけど。
「向井君は見ようと思えばいつでも見られるんだから、今はこっちの方が大事でしょ!」
呆れたように言い放つ私に、カンちゃんはやっぱり眠そうな顔のまま、少しだけ口角を上げる。
「もう読んだ?」
「え?」
「それ」
指をさされたのは手元の企画書。
コクンと頷くと「向井君に浮気したバツとして、もうちょい付き合えや」なんて意味の分からないことを言い出す。
「向井君は浮気じゃなくて本気だけど、付き合ってあげない事もない」
笑いながらそう言った私をフハッと笑うと、隣に座り直して手元に視線を落とした。
「どう?」
「すごく楽しそう! これ読んだだけでも行ってみたいって思うもん」
笑顔を浮かべる私に、カンちゃんはホッとしたように安堵の溜息を吐く。
「でもさ、何か足りないっつーか、他と 差が付く“これ”ってのがないんだよなー」
胡座をかいて、考え込むように唇に手を当てながら眉根を寄せる仕草に、自然と視線が止まる。
「……」
こんな風に家でカンちゃんと仕事をするのは初めてで、“カンちゃん”の中に時々垣間見える“宮野さん”に、不思議な感覚を覚える。
知り尽くしていると思っていたはずのカンちゃん。
だけど、会社でこんなに近い距離で一緒に仕事をする機会なんてなかったから、いつもこんな風に仕事をしているんだと、新鮮な気持ちになった。
「ヒヨが今まで行った野外フェスで、こんなのがあったらいいのにと思った事とか、困った事とかってなかった?」
「私が?」
「そう。何かやっぱりどれも企業をベースに考えちゃうから」
そう言われて、うーんと考え込む。