お嬢様の秘密Ⅱ
「ああ。『ユリ』っていう名前は俺がつけたんだ。花言葉は『威厳』、『無垢』など。

お袋が好きだった花というのもあるんだけど、上に立つものとして威厳は持って欲しかったから。」


たとえ一生出自を知ることはなくても自分を強く持ってほしい………


お祖母様は亡くなる前にそんなことを言っていたそう。


「お袋は未来を見通せるほどの不思議な力があったらしいよ。死ぬ直前に言っていたし。」


「だからユリなんだ………。」


「それとな、ずっとなんとか隠してきたけどユリって実は片仮名じゃないんだ。嘘だと思ったら戸籍を確認してごらん。

漢字で『優莉』」


え!?


「全然知らなかった………。」


「漢字がばれたら危険かなって思って、学校に根回しして校長や一部の先生を俺らの息のかかった人に変えていたしな。」


「どうしてそんなことまで教えてくれなかったの?」


「だって……名前の由来はもう一つ。『りいのように強く優しく』だからな……。」


莉依紗様………。


「急に惚気話はやめてください、旦那様。」


「しょうがないだろ?今だからこそ言えるんだ。そもそも俺らは一生ユリに会わないって決めていたんだ。

それを決めたのはりいと俺と親父だけど………。りいはそのあとウツ病で倒れたんだ。私のせいだって言って………。」


あんな強い意志を持った人なのに………。


「親父と相談してりいは会わないって固く決めてしまっていたけど、様子だけを見に行くために俺はユリに会っていた。

沙那は父親は出張していてなかなか会えないって誤魔化してくれていたし。

父親に会った回数があまりにも少なかったし写真もなかったから入れ替わってもうまく誤魔化せた。」


「そうだったんだ………。」


「聞きたいことはそれだけか?」


私は大きく首を縦に振った。


「じゃあな、ユリ。漢字で名乗るもよし………出来ればそうしてほしいけど。

困ったら親父じゃなく俺も頼ってこいよ。学園は今騒ぎがひどくて休講。

ユリが戻ってきた日に学校再開予定だ。………しっかりやってくれよ………。」


「がんばるね!………お父様。」


なんか……


これから頑張れる気がする………。


いろいろな人に助けてもらいながら生きてきたことに改めて感謝することができた日だった。



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