スーツを着た悪魔【完結】

怖いこともたくさんあった。

だけど悠ちゃんは戯れでも、側にいてくれた。

たとえそれが私を思う本当の優しさじゃなかったとしても――

子供の頃の私は救われた。慰められた。それは事実だ。



まゆは手を伸ばし、シーツの上で堅く握られている悠馬の手を包み込むように握りしめ、まっすぐにキラキラと輝く瞳で悠馬を見つめた。


悠馬が初めてまゆと出会ったときと同じ瞳で。



「ありがとう、悠ちゃん……今日は、それが言いたくて来たの。ありがとうって……言いたかったの……」



まゆの感謝の言葉に、悠馬は雷に打たれたようにしばらく無言になっていたが、ふと思い出したように口を開いた。



「――まゆ。アスランはね……」

「うん。知ってる。深青が、読んでくれたから……」



まゆは指先で涙を拭いながらにっこりと笑う。



「深青ね、とっても優しいんだ。だから私、うんと幸せになるし、彼を同じように幸せにしたいの」

「――そう」



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