スーツを着た悪魔【完結】

少し髪が伸びて、頬にかかっている。


そういえば最近忙しかったもんね。

髪を切りに行く暇もなかったのかも……。


それでも、深青は私をここ、ニューヨークへと連れてきてくれた。

ご両親と、まだ会っていない上の妹さんに会わせるために……。



心配することはないと、百回、二百回と聞かされた。

深青だけじゃない。未散さんも、頼景さんからもそう聞かされた。


愛されているのはわかる。

そして自分も深青を愛している。


だけど愛する人のご両親に会うことを緊張しない女がいるだろうか。


自分は彼にふさわしいのか、迷わない女がいるだろうか。



「本当に、私でいいの……?」



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